総裁選への立候補断念を決め、取材に応じる菅義偉首相=2021年9月3日午後1時6分、首相官邸、上田幸一撮影
菅義偉首相が自民党総裁選に立候補しないことを表明した3日、衆院選や参院補選を控える山口県内の関係者にも驚きが広がった。
【写真】議連の共同代表発起人の一人、林芳正・元文部科学相。米議会でインターンをした際に議会予算局の役割を知り、独立財政機関が日本にも必要だと痛感したという=2021年7月19日、東京都内、榊原謙撮影
「びっくりした。厳しい状況で大変だったと思うが、やはり結果がすべてなのか」。自民県議の一人は、新型コロナの感染状況や内閣支持率の低迷が首相の判断に影響したと受け止める。別の自民県議も「支持率が下がり、予兆はあった」と話す。「誰が次の総裁になってもコロナ対策に直面する。時代をよく理解し、国民に希望を与えられる政策を打ち出せる人になってほしい」と期待した。
次期衆院選の山口3区には、現職で11選をめざす河村建夫元官房長官(78)と、26年務めた参院議員を8月に辞職した林芳正元文部科学相(60)が立候補する構えだ。公認争いがかかるだけに、両氏の支援者らは総裁選や党役員人事の行方に目を凝らしている。
河村氏の陣営関係者は「よく決断した」と受け止めた。新執行部には「党規通りにきっちりやってくれる人がいい」と話し、「現職優先」の方針が守られることを求めた。新総裁誕生後、河村氏が所属する派閥を率いる二階俊博幹事長が交代したとしても、「それほど影響はない。何のために党規があるのか。(現職として)誠心誠意、粛々と王道を行く」と自信を示した。
林氏の陣営関係者も「潔い。このまま衆院選を迎えたら持たないとの判断だろう」と受け止める。
二階氏は林氏の処分もちらつかせてきた。二階氏が菅首相とともに交代すれば「河村氏の勢いも落ちるのでは」と期待する。林氏の支援者は「これからどう転ぶかわからない」と警戒しつつ、こう続けた。「面白くなってきた」
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■「退場は当然」野党は批判 県内の各党は菅首相の突然の表明をどう見たのか。
公明党県本部の先城憲尚代表は「菅さんは一生懸命取り組んでいたと思うが、自分の政策を打ち出しきれず、コロナ対策でも閉塞(へいそく)感を拭いきれなかった。次の総裁には空気を一変させてほしい。閣僚を一枚岩にし、国民を引っ張ってもらいたい」と望んだ。
立憲民主党県連の小田村克彦代表は「自民党は総裁選に向けて私利私欲、党利党略に走る時間があれば、臨時国会を開いて堂々とコロナ対策を議論すべきだ」と話す。
山口3区に立候補を予定する立憲県連の坂本史子副代表(66)は「首相はコロナ対策などで説明責任を果たさず、国民の健康と命がないがしろにされてきた。退場は当然」と断じた。衆院選や参院補選では「小さく届きにくい声をすくい上げるために自分の闘いをする」と強調した。
共産党県委員会の吉田貞好委員長は「コロナ禍で国民が苦しむ中、臨時国会を開かずに首相を投げ出すのは無責任で怒りを禁じ得ない。自民党政治は行き詰まり、矛盾が限界に達している。衆院選では野党共闘で自公政権を倒す」。
社民党県連合の佐々木明美代表は「私たち野党も力不足で有権者の期待を集められていない。コロナ禍で生活が厳しい方々に響く訴えを衆院選と参院補選でしていく」と話した。
(高橋豪、太田原奈都乃、中川壮、伊藤宏樹)
朝日新聞社