第1次大戦終結100年で式典 仏大統領 排他的風潮に警鐘 |
2018年11月11日 20時55分、NHK NEWS WEB 配信より
人類史上初めて世界規模の戦争となった第1次世界大戦が終結してから11日で100年になります。フランスでは世界60か国余りの首脳を招いた追悼式典が開かれ、マクロン大統領は、自国第一主義や排他的な風潮が広がる現状に警鐘を鳴らし、各国に結束を呼びかけました。
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第1次世界大戦は、1914年に当時のオーストリア・ハンガリー帝国の皇太子が暗殺されたのをきっかけに起き、4年間で1800万人もの犠牲者を出しました。
大戦の終結からちょうど100年となるパリでは、11日、マクロン大統領が主催する追悼式典が開かれ、麻生副総理兼財務大臣のほか、中間選挙後、初の外遊となるアメリカのトランプ大統領やロシアのプーチン大統領など60か国余りの首脳が参列しました。
この中で、マクロン大統領は「愛国心を持つこととナショナリズムとは正反対のものだ。われわれは、恐れではなく希望を築くべきだ」と述べ、自国第一主義や排他的な風潮が広がる現状に警鐘を鳴らし、各国に結束を呼びかけました。専門家の間からは、自国第一主義や排他的な風潮が社会に広がる現状を、ファシズムが台頭し、第2次世界大戦へとつながった当時の状況と重ねる見方も出ていて、マクロン大統領は各国の首脳を前に、同じ過ちを繰り返さないためには国際協調こそ重要だと訴えた形です。
米ロ首脳が握手
追悼式典には、中間選挙後、初の外遊となるアメリカのトランプ大統領や、ロシアのプーチン大統領など60か国余りの首脳が参列していて、トランプ大統領とプーチン大統領が顔を合わせ握手をする場面もありました。
両首脳が会うのは、ことし7月にフィンランドで行った首脳会談以降、初めてで、プーチン大統領は握手のあとトランプ大統領に親指を立てるようなしぐさを見せました。
ホワイトハウスによりますと、今回は両首脳の正式な首脳会談は見送られ、今月下旬に南米のアルゼンチンで開かれる主要20か国の首脳会議、G20サミットにあわせて行う見通しだということです。
第1次世界大戦とは
第1次世界大戦は1914年に当時のオーストリア・ハンガリー帝国の皇太子が暗殺されたのが発端で、その後、人類史上初めての世界規模の戦争に発展し、戦車や毒ガスなどの新兵器も使われ、4年間で1800万人もの犠牲者を出しました。
アメリカの参戦もあって連合国側が勝利し、100年前の1918年11月11日、フランスで休戦協定が結ばれ、大戦は終結しました。
翌年、パリで行われた講和会議では、アメリカのウィルソン大統領が国際協調を唱え、国際連盟の創立に結びつきました。
ただ、そのアメリカは、孤立主義に立つ議会が批准を否決したことで参加せず、国際連盟は期待された役割を十分果たせませんでした。
また、パリ講和会議の結果、フランスなどの連合国と敗戦国ドイツとの間で結ばれたベルサイユ条約では、ドイツに多額の賠償金が課されるなど報復の意味合いが強く、ドイツ国内で不満が広がりました。
その後、ヨーロッパでは排他的な勢力やファシズムが台頭し、甚大な被害をもたらした戦争の教訓を生かせないまま、第2次世界大戦へと突き進んでいきました。
マクロン大統領 国際協調の重要性訴える狙い
マクロン大統領は、自国第一主義や排他的な風潮が社会に広がる現在の状況を「まるで1930年代のようだ」と表現し、ファシズムが台頭して第2次世界大戦へとつながっていった当時の国際情勢と重ね合わせ、危機感をあらわにしています。
今月に入って国内10か所余りの当時の激戦地を歴訪し、10日には、休戦協定が結ばれた北部のコンピエーニュに当時の敗戦国ドイツのメルケル首相を迎え、改めて不戦の誓いを立てました。
追悼式典でも、未曽有の犠牲者が出た第1次世界大戦の教訓を引き合いに出しながら、同じ過ちを繰り返さないためには国際協調が重要だと訴える狙いがあります。
マクロン大統領は、追悼式典に合わせて3日間の日程で多国間の協力を呼びかける平和フォーラムを開催する予定で、第1次世界大戦の終結から100年という節目を機に、自国第一主義に対抗するため、各国の首脳や企業、市民から幅広い支持を集めたい思惑があるとみられます。
米仏関係 蜜月演出も亀裂か
国際社会からの孤立もいとわず自国第一の「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領と、多国間による国際協調を重視するマクロン大統領は、地球温暖化対策や自由貿易、イラン核合意など多くの点で立場を異にします。
その中でも、マクロン大統領はトランプ大統領と率直に話し合い、解決策を探る姿勢を続け、去年7月のフランス革命記念日には、就任後初めて、トランプ大統領をパリに招いて歓待し、強い同盟関係と個人的に良好な関係をアピールして見せました。
マクロン大統領は、アメリカとヨーロッパの関係が悪化する中で橋渡し役を演じるとともに、化学兵器の使用疑惑をめぐって、シリアのアサド政権に対し、アメリカとともに軍事攻撃に踏み切るなど安全保障分野やテロとの戦いでは連携を深めます。
ことし4月には、トランプ政権になって初の国賓としてアメリカを訪問するなど、特別な信頼関係にあることをうかがわせていました。
しかし、今回、トランプ大統領は、マクロン大統領との首脳会談に先立って、「マクロン大統領は『ヨーロッパは、中国やロシアだけでなくアメリカからも防衛するための軍隊を構築すべきだ』と言っている。アメリカを侮辱している」などとツイッターに書き込んで不快感をあらわにしました。
10日の米仏首脳会談では、トランプ大統領がNATO=北大西洋条約機構の加盟国に国防費の公平な負担を求めたことにマクロン大統領は理解を示したものの、温暖化対策やイラン核合意などの問題では依然として意見の隔たりは埋まらず、ぎくしゃくした関係が続くことになりそうです。
トランプ大統領 墓地訪問を取りやめ
フランスを訪問中のアメリカのトランプ大統領は10日、マクロン大統領と首脳会談を行ったあと、パリ郊外にある第1次世界大戦で亡くなったアメリカ兵の墓地を慰霊のため訪れる予定でしたが、急きょ取りやめました。
これについて、ホワイトハウスは「天候不良のため」と説明し、代わりにケリー大統領首席補佐官らが墓地を訪れたとしています。
この墓地には第1次世界大戦で亡くなったアメリカ兵2000人以上が眠っていて、アメリカ政府の元高官からは「アメリカのために亡くなった兵士への敬意をないがしろにするものだ」といった批判の声も上がっています。
トランプ大統領の車列に上半身裸の女性近づく
第1次世界大戦が終結してから100年となる追悼式典にはアメリカのトランプ大統領も参列していますが、式典前、会場に向かうトランプ大統領を乗せた車列に上半身裸の女性が近づくひと幕がありました。
女性はトランプ大統領に抗議する活動家とみられ、すぐに警備員に取り押さえられましたが、現地の警備態勢の甘さが露呈した形になりました。
私のコメント : 平成30年11月11日、第1次世界大戦が終結してから11日で100年になります。フランスでは世界60か国余りの首脳を招いた追悼式典が開かれ、マクロン大統領は、各国に結束を呼びかけました。